【真田丸と現代医学】真田昌幸の最期は「うつ病」の可能性アリ / 真田幸村の父にして稀代の名将を蝕んだ心の病

真田昌幸の死因


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こんにちは! 歴史好き女医の馬渕まりです。専門は代謝内科。脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病が得意分野です。

真田昌幸・幸村親子が関が原の戦いで西軍につき、その後、九度山で幽閉生活を送っていたことは皆さんご存知でしょうか?

・表裏比興の者
九度山は、高野山の麓にある寒さ厳しい山奥の村で、晩年の昌幸は相当厳しい生活だったと伝わっております。良くも悪くも「表裏比興の者(ずる賢いやつ)」と警戒された智将の面影は皆無となって、最期は金の無心をしたり無気力な発言を繰り返したり、なんとも情けない姿だったなんて話も。

・真田昌幸の死因
これは一体、どうしたことでしょう……。極寒かつ侘びしい山中の生活は、人の健康・精神にどんな作用を及ぼすのでしょうか? 今回は、真田昌幸の死因について診察してみます。

・独立大名のポジションをゲット
幼い頃は武田信玄の小姓として気に入られ、昔から頭の良さを知られていた真田昌幸。勝頼の代になって武田家が滅亡すると上杉・徳川・北条の大国に囲まれ、ここから「表裏比興」の能力を発揮。周囲の状況に応じて手を組む相手をコロコロ変え、最終的には豊臣秀吉のお墨付きを得て、独立大名のポジション手に入れます。

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・関ヶ原の戦い
ここからは話をガツンと飛ばして、1600年(慶長5年)の7月へ。この年、徳川家康の呼びかけで挙兵した「上杉景勝討伐」に真田一族も参加すると、その後、同家の運命は大きく分岐します。そうです、関ヶ原の戦いです。

・家族が敵味方に分かれて戦う
畿内で挙兵した石田三成の西軍に昌幸と幸村が味方すると、その一方で長男・信之は東軍の家康に付いたのです。親子・兄弟が敵味方に分かれて戦うことは武士の定めかもしれませんが、このとき昌幸の三男・四男も東軍についたのは、意外と知られてないのでは? 真田の豆知識ですのでお召し上がれ♪

・居酒屋トークで7時間ぐらいは話せるレベル
ともかく西軍の旗を掲げ、上田城にこもった昌幸・幸村は凄まじい活躍を見せました。3万5千の徳川本隊を引き連れ、中山道を通ってきた秀忠軍に手痛い一撃を与え、結果、関ヶ原への参戦を阻んだのです。その痛快劇たるやあまりに鮮やか過ぎて、居酒屋トークで7時間ぐらいは話せるレベルですが、詳細はドラマの楽しみにとっておきましょう。

・2人が切腹していれば!?
昌幸の悲惨な晩年はここからです。真田親子の奮闘むなしく関ヶ原の西軍は一日足らずで崩壊。敗北した真田昌幸・幸村親子もタダではすみませんでした。当然ながら“死罪”が申しつけられたワケで、もしも、この段階で2人が切腹していれば大河ドラマ『真田丸』も生まれなかったでしょう。

・高野山へ流罪
両者は、長男・信之と、その義父にして徳川四天王の一人・本多忠勝の必死の助命嘆願により命だけは救われ、まずは高野山へ流罪となります。このとき昌幸55歳、幸村は33歳。

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・日中の寒暖差が激しい土地
その後、『幸村が嫁と暮らしたい』と願ったため、女人禁制の高野山から近所の九度山へお引越し。実は、高野山が極寒過ぎて生活するのが辛いから……という話も根強いですが、私が調べた結果、信州上田の気温とあんまり変わらないんですよね。これは困りました。が、それまでの「立派な住居」と、流配地の「粗末な家」では防寒設備が格段に違い、実際の寒さははるかに厳しいのではないでしょうか。高野山近辺では、日中の寒暖差が激しい土地であったことは確かなようですし。

・和歌山藩より50石の扶持も支給
ちなみに真田幸村の奥さんは、豊臣政権の名将・大谷吉継の娘でした。幸村が、その婿として大きな期待を寄せられていたことがご理解できるでしょう。粗末とはいえ、九度山での生活には家臣が16名付き、和歌山藩より50石の扶持も支給、さらには長男・信之も仕送りしていたとのことです。お金はない。しかし本当にドン底でもない。それでもやっぱり金銭的には厳しかったようで、昌幸が信之に対して『お金ちょうだい』と送った手紙が残ってます。しかも10年で20通ほど。

・早く残りの20両も送ってほしい
お金に関してはこんな逸話も残されております。あるとき昌幸が『40両持ってこい』と手紙を送ったところ、4男が20両ほど持って九度山にやってきました。これに対して昌幸は「こちらは借金が多くて困っている。早く残りの20両も送ってほしい。無理だったら5両でも10両でもいいからね!」と答えており、えぇと、なんだか悲しくなってしまいますね。

・年老いて気力も枯れちゃった
実は昌幸は、最初の頃は信之を通して赦免運動を申し出ておりました。が、それが無理だと悟ると目に見えて元気が無くなり、かなり落ち込んでいった様子が想像されます。寒暖の差が激しいこともストレスの一因となりますしね。特に、晩年は病気がちだったようで、彼の手紙には『生活はあんまり変わりはないけれど、ただこの1年はすっかり年老いて気力も枯れちゃったよ』みたいな記述と共に、何度も『大草臥(おおくたびれ)』という言葉を繰り返しており、「鬱(うつ)」を思わせるような状態でした。

・徳川家を二度も翻弄した名将がうつ病に?
精神的にもタフであったであろう戦国武将と同病気はなかなか結びつきませんが、実は生涯有病率は3~16%あり、日本人では10~20人に1人はかかるありふれた病気なのです。そしてその症状はかなり多彩なため、簡潔にまとめるのは難しいのですが、『落ち込んだ気持ちがずっと続き日常生活を送ることに支障をきたす病気』と考えて下さい。

・うつ病の原因はハッキリしておりません
ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の低下によって起こるというモノアミン仮説や【神経の損傷】が原因など、様々な説があり、実質的にはストレスや身体的な病気、環境の変化など、様々な要因が重なって発症すると考えられています。特に多いのは、人間関係の変化と環境の変化です。たとえば身近な人の死やリストラなどの悲しい出来事は直接的なトリガーとなります。

・貧乏かつ極寒の地へ流配
意外かもしれませんが、昇進や結婚、出産といっためでたい出来事がキッカケでなる場合もある他、慢性の病気や貧困、社会的孤立も発症に関わります。上杉・徳川・北条を手玉に取った上田の名将から、貧乏かつ極寒の地へ流配なれば、同病になっても全く不思議ではありません。


ここで少し専門的に「うつ病の症状」を診断基準から見てみましょうか。米国精神医学会の「DSM-IV」を例に挙げました。うつ病の診断基準は「以下の症状のうち、当てはまる項目が少なくとも1つある」かどうか。

1.抑うつ気分
2.興味または喜びの喪失。さらに、以下の症状を併せて、合計で5つ以上が認められる。
3.食欲の減退あるいは増加、体重の減少あるいは増加
4.不眠あるいは睡眠過多
5.精神運動性の焦燥または制止(沈滞)
6.易疲労感または気力の減退
7.無価値感または過剰(不適切)な罪責感
8.思考力や集中力の減退または決断困難
9.死についての反復思考、自殺念慮、自殺企図

※上記症状がほとんど1日中、ほとんど毎日あり、2週間にわたっている症状のため、著しい苦痛または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能障害を引き起こしている。これらの症状は一般身体疾患や物質依存(薬物またはアルコールなど)では説明できない。

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・ともかく早めの受診が効果的
ちなみに「大うつ病」というのは「重症の」うつ病を表すのではなく「典型的な」うつ病を意味し、その治療法は「充分な休養」+「薬による治療」です。何かおかしいな……と思ったら、ともかく早めの受診が効果的です。

・息子の幸村もあと少しで危なかったのでは?
さて昌幸ですが、結局、上田に帰ることは叶わず、1611年(慶長16年)6月4日、九度山でその生涯を閉じました。享年65。昌幸が死去した後、主立った家来は信之の元へ行ってしまい九度山は閑散とします。それから大坂の陣までの間に、幸村が何をやっていたかの記録はあまり残っていません。奥さんが側にいたから九度山生活は堪えられたんですかね。昌幸が死んだ後、義兄の小山田茂誠に宛てた手紙を見てみましょう。

・歯も抜けた……
手紙の趣旨は「鮭をもらったことへの礼状」なのですが、その中に「我々なとも去年より俄ニとしより、事の外病者ニ成申候、はなともぬけ申候、ひけなともくろきハあまり無之候」という表記があります。現代語にしますと「私も去年よりにわかに年をとり、ことのほか病気がちになりました。歯なども抜け、ひげも黒いところがあまりなくなりました」。

・豊臣方の呼びかけに呼応した信繁
このとき幸村はまだ40代です。やばいよ、父ちゃんと同じく生き甲斐が無く、弱ってきてるよ……。このままことが起こらねば、おそらく親子で同じような転帰をたどったに違いありませんが、1614年、豊臣方の呼びかけに呼応した信繁は九度山を出て大坂に入城。その後始まる彼の大活躍はドラマにお譲りしましょう。

・享年93のウルトラ大往生
人は生き甲斐を無くした時、鬱(うつ)になることがままあります。真田親子の人生を見ると、彼らの生き甲斐は“戦い”にあったのかもしれません。ちなみに東軍についた信之お兄ちゃんの最期は、なんと享年93のウルトラ大往生だったようです。

何事も 移ればかわる世の中を 夢なりけりと 思いざりけり by真田信之

執筆: 武将ジャパン

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